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大規模修繕ブログ CONTENTS

建物をより安全に、より美しく長く維持するのに必要なのがメンテナンスです。ビルや戸建て住宅はもちろんですが、マンションや集合住宅には長期に渡って計画を立て修繕を行う「大規模修繕工事」が必要になってきます。工事内容も重要ですが、どうしても気になってしまうのは費用のこと。
この記事では、国土交通省が公開している「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」を元に、費用の目安や相場、コストを抑える方法などをご紹介します。

大規模修繕工事とは?

マンションにお住いの方なら大規模修繕工事という言葉を1度は聞いたことがあるのではないでしょうか。大規模修繕工事に関して漠然としたイメージはあるけれど、結局のところ何を指すのか疑問に思いますよね。大規模修繕工事は、建築基準法の第二条で以下のように定義されています。

十四 大規模の修繕 建築物の主要構造部の一種以上について行う過半の修繕をいう。
十五 大規模の模様替 建築物の主要構造部の一種以上について行う過半の模様替をいう。


建築基準法(第二条一部抜粋)

簡単に要約しますと、「壁・柱・床・屋根・階段などの建物のメインの部分の中から1種類以上を半分以上を修繕すること」を指します。
また、大規模修繕工事と聞くと、どうしても大きいマンションのことを想像してしまいがちですが、上記の条件に当てはまる場合は、10戸前後から集まる比較的小規模のマンションでも「大規模修繕工事」と呼びます。

大規模修繕工事の必要性

では、なぜ大規模修繕工事が必要なのでしょうか。
マンションに限らず、戸建て、アパート、ビル、どんな建物も年月とともに必ず劣化します。建物の美観を保ち、安全に暮らすために建物の修繕工事を行うことが重要です。また、資産価値を維持するという意味でもメンテナンスを欠かさないことが大切になってきます。

個人の意思で行動できる戸建ての住宅と違い、マンションや集合住宅は大勢の人が関係するため、どうしても意思決定に時間が掛かってしまいます。なのであらかじめ大規模修繕計画を立て、それに則った長期的な修繕が必要になってきます。

マンション規模別の費用相場

マンション規模別の費用相場
様々な要因でマンションの大規模修繕費用は変わってきますが、もちろんマンションの規模も例外ではありません。まず最初にマンションの規模から見る大規模修繕工事でかかる費用相場を紹介していきます。

大規模マンション

法律で定義されていませんが、一般的には総戸数が100戸以上の集合住宅を大規模マンションと呼びます。総戸数151~200戸以下の大規模修繕マンションの費用相場は、1億5,000万~2億4,000万円程度です。総戸数が多く、1戸あたりの費用を低く抑えられるのが魅力ですが、共有部分が充実しすぎていると割高になることも。

小規模マンション

小規模マンションとは50戸以下のマンションを指します。総戸数31~50戸以下マンションの場合、大規模修繕工事の費用相場はおよそ4,000~6,000万円です。居住者が少なく、比較的意思決定もしやすい小規模マンションですが、1戸でも修繕費用の滞納者が出てしまうと資金繰りが大変になってしまいます。

戸あたり・床面積の費用相場

次に、戸当たりや床面責から見る大規模修繕工事の費用相場をご紹介します。

戸あたりの費用相場

戸あたりの工事金額
1戸あたりの工事金額は、「100~125万円/戸」の割合が最も高く、「75~100万円/戸」、「125~150万円/戸」と続きます。
1戸あたり100万円を目安とすると、10戸のマンションであれば、1,000万円前後、50戸のマンションであれば、5,000万円前後といった計算になります。あくまで目安になりますが、1戸あたりでの計算は簡単に相場がわかって便利ですよね。

床面積あたりの費用相場

床面積あたりの費用相場
床面積あたりの費用相場は「1~1.5万円/㎡」の割合が最も高く、「0.5~1万円/㎡」、「1.5~2万円/㎡ 」と続いています。
月々で支払っている修繕積立金から想像しやすいのは床面積あたりの費用相場です。現状、支払っている金額と比べていかがでしょうか?積立金の全てが大規模修繕費用に使われるわけではありませんが、納得の行く金額が算出できたのではないでしょうか。
専有面積あたりの修繕積立金の平均額の目安
参考までに、専有面積あたりの修繕積立金の目安をご紹介します。20階未満の5,000㎡未満と、20階以上の修繕積立金がそう変わらないのは驚きですよね。やはり戸数が多いほど共有部分の修繕費用が割安になるといったところでしょうか。

大規模修繕工事回数と工事金額の関係

修繕工事回数から見た工事金額は、1回目は「4,000~6,000万円」の割合が最も高く、2回目は「6,000~8,000万円」、3回目以上は「6,000~8,000万円」「10,000~15,000万円」の割合が高くなっています。
大規模修繕の実施時期は、およそ12年~15年間隔が多いとされています。3回目の修繕工事となれば、築年数はざっくりと計算しても40年前後になります。築年数が古ければ当然劣化箇所も増えてきますので、修繕費用も増加傾向にあります。

大規模修繕費用の計算は現状の劣化状況も大事

工事金額はマンションの規模や劣化状況等で異なります。また、建物をどのくらい維持したいか、次の修繕は何年後に行うかでも費用は変わってきます。今だけの金額だけではなく、長いスパンで施工内容を考える必要もあります。

大規模修繕工事の費用を抑える方法

大規模修繕工事の費用を抑える方法
ここからは、知っておくと便利な大規模修繕工事の費用を抑える方法をご紹介致します。

1.相見積もりを取る

マンションの大規模修繕工事は、数百万~数千万円かかる大きな工事になるので、1社だけの見積りで判断せず、複数社から見積りをとり、比較・検討することで、コストを抑えることができます。
この時に注意したいのが、金額だけで業者を選んでしまうことです。施工範囲や工事内容もしっかりと吟味し、信頼のおける工事業者を決める必要があります。

2.工事内容や施工範囲を見直す

複数社から見積りを取り、比較・検討した際に、業者によって工事の工事内容や、施工範囲が違うことがあります。提案してもらったいくつかのパターンの中から、低コストの工事内容に変更したり、施工範囲を狭めることで費用を抑えることができます。

施工箇所を減らす際は、まだ修繕しなくても大丈夫な状態、かつ、足場が不要な箇所にすることが重要です。例えば、共用廊下の防水工事など、緊急を要せず足場が不要な箇所であれば、数年後に先延ばしにすることで一旦は費用を抑えることができます。
工事内容や範囲を見直す際の注意点としては、数年後に見送った箇所だけ施工する場合、大規模修繕に盛り込んだ場合より割高になる可能性があります。

3.建物の規模に合う施工業者を選ぶ

マンションの管理会社、大手の工事業者、大規模修繕を行う専門業者など、大規模修繕工事を依頼する先は様々です。
大手の工事業者だと安心ではありますが、その分費用は高くなる傾向にあります。工事の専門家ではないマンションの管理会社に依頼する場合は、工事業者に委託する形になり、その分中間コストが掛かってしまうためどうしても費用が高くなる傾向にあります。
仮に100戸~300戸ほどある規模の大きなマンションであれば、予算が許す限りは高くても大手の工事業者や管理会社のほうが安心かもしれません。
マンションの規模が10戸~50戸ほどの小規模マンション・中規模マンションであれば、専門の工事業者に直接依頼した方がコストも下がる傾向にあり、工事業者と直接やりとりできるので、工事もスムーズです。
何れにせよ専門の工事業者に直接依頼する場合は、大規模修繕工事の実績があることを確認し、信頼できる業者かを見極める必要があります。

4.定期的なメンテナンスの実施

マンションの大規模修繕の周期はおよそ12年で継続的に行われます。手間と費用を考えると大規模修繕時に全ての箇所のメンテナンスができれば理想的ですが、すべての箇所が一律で劣化するわけではありません。
例えば、一般的に劣化が早いとされている鉄部は12年の周期より早めに塗装を行う必要があります。
修繕が必要な箇所を適切な時期にメンテナンスを行えば、劣化スピードを遅らせることができ、マンションはより長くその機能と外観を保つことができます。
結果、大規模修繕時の工事内容を減らすこともできるので、可能な範囲で定期的なメンテナンスを行っていくことが重要です。

大規模修繕工事では追加費用が発生する場合も

マンションの大規模修繕工事では、追加で費用が発生する場合もあります。ここからは一例として、追加工事が出やすい外壁の下地工事について詳しくご説明させていただきます。

追加工事事例:外壁の下地工事

外壁の下地状況は、打診ハンマーという調査用のハンマーで下地の調査を行いますが、工事前には足場がなく、外壁全面を調査して数量を出すことができません。
見積り段階では、手の届く箇所を調査してそこから推測される数量で「概算見積り」を出します。その後、工事が始まり足場が組まれてから、外壁全面を調査することで「実際の数量=実数」が出ます。
そこで初めて、見積もり段階の「概算」数量と、工事が始まってから調査した「実数」の数量を比較し、「実数」のほうが少なければ減額になり、多ければ増額となってしまうため、追加費用が発生する場合があります。
中にはコストを上げるために実数をサバ読む業者がいないとは言い切れません。「実数」が本当に正確なのかを確認するため、図面に書いて調査票を提出してもらったり、外壁のマーキング写真を提出してもらうと安心です。

費用を抑えるために専門業者へ依頼しよう

大規模修繕工事とは何か、費用の目安や相場、コストを抑える方法などをご紹介しました。マンションを長く維持するためには、費用や定期的なメンテナンスはもちろんのこと、施工業者選びも重要になってきます。施工不良が出ないよう、マンションの大規模修繕工事は専門業者へ依頼しましょう。